八月某日、認定業務の最終確認中、作業机の隅に置いたスピーカーから小さく歌声が漏れていることに気づきました。確認いたしますと、数分前に検品用途で再生した校歌の音声ファイルが、再生停止の操作を経ないまま流れ続けていたものでありました。

対象は「早朝の散歩を八百日続けた」という営みに対して謹製した一曲であり、歌詞の一節「今日も靴紐、結び直して」がちょうど繰り返し流れておりました。業務としては些事でありますが、静かな工房の中に低く流れるその一節は、認定作業の手を一瞬止めるだけの落ち着きを持っておりました。

当協会の業務は数値と検品基準に基づく淡々としたものが大半でございますが、まれにこうした偶発の再生が、謹製物の出来を人間の耳で確かめ直す機会にもなっております。今回の一件について、対処すべき不具合は特にございません。スピーカーの電源は、その後きちんと切りました。

本稿は現象台帳#ev-0172を典拠とする。