歌唱合成の完成物は、歌詞が正しく聞き取れるかどうかをWER(Word Error Rate、単語誤り率)にて機械的に検品しております。導入当初、しきい値はWER0.15を一律の合格基準としておりました。しかしこの基準では、七五調の枠に収まりきらない歌詞を持つ楽曲の大半が不合格となる事態が生じました。
問題を切り分けたところ、原因は歌詞そのものではなく、モーラ数の制約下で生じる「詰め物」にあることが判明いたしました。字数を合わせるための機能語(「けり」「なり」等)や助詞単独の結句が、音声合成エンジンの発音を不安定にし、結果としてWERを押し上げていたのであります。
対策として、まず作詞係へのプロンプトから語尾候補の列挙を撤廃いたしました。候補を並べて提示する方式は、かえって定型化(メニュー化)を招いていたためであります。次に、検品基準そのものを二段階に改めました。WER0.25未満は無条件合格、0.25以上0.40未満は「品質注記」を一筆添えたうえで合格とし、0.40以上のみを差し戻しの対象とする運用であります。
この二段化により、差し戻し率はおよそ四割から一割程度まで低下いたしました。なお、行末助詞の使用そのものを全面禁止とする案も審議されましたが、倒置による効果的な結句(例:「栄えあれ 永遠に」)まで失われる懸念があり、現時点では見送りとなっております。この点は継続審議の課題として残しております。
本稿は現象台帳#ev-0072・#ev-0074・#ev-0076を典拠とする。